仮定法について理解しよう

仮定法について理解しよう

1. 仮定法とは何か

「仮定法はifのことだ」と勘違いしている英語学習者が結構いらっしゃるので、ここで仮定法の「法」とは何かを説明しておきます。

日本語で「法」というと法律やルールをイメージしがちですが、文法の世界で「法」はmood(「気分」のmoodです)という英語名であり、「あることを事実として述べるのか、命令として述べるのか、仮定として述べるのか」を表すときの動詞の活用の形のことです

つまり、「あることを『実際にあったこと、いつも実際にあることだよ』として述べるのか、『今実際には起きていないけれども、これから実現させてね』と述べるのか、『実際そうではないけれど、仮にそうだとしたら』という前提で述べるのか」ということを、それぞれ違う動詞の活用の形を使って区別して表すのです。

①「実際にいつもあること、過去実際にあったことを述べる動詞の活用の仕方」を直説法と呼びます(いわゆる普通の現在形とか過去形)。
I woke up at seven.(私は7時に目が覚めた)

②「今実際に起きていないことをこれからやってくれと命令するときの動詞の活用の仕方」を命令法と呼びます(命令文の際の原形で使われる動詞)。
Wake up!(起きて!)

③「実際には起きていないけれど、仮にもしそうだとしたら、ということを表すために使う動詞の活用の仕方」を仮定法と呼びます。
If I had woken up at seven,…(もし私が7時に目を覚ましていたら…(実際にはそうでなかったけれど))

したがって、仮定法というのはifがついているとかいないとかではなく、「あくまでこれは仮の話だよ、想像上の話だよ」ということを表すための「動詞の活用の形」なのです。

仮定法の3つの時間

そして、直説法に「実際にいつもそうだ」ということを表す現在形と、「あのとき実際にそうだった」を表す過去形があるように、仮定法にも時間に応じた違う形があります。

仮定法に通底するコンセプトは「実際そうではないけれど」です。

仮定法現在:動詞の原形を使う

①「今実際にそうではないけれど、これからこうしてね」
I suggest that the plan be postponed.(その計画の延期を提案します)
⇒suggest(してみてはどうか)、demand(~するよう強く要求する)、recommend(~するよう推奨する)など、「やれよ、やろうよ」的な意味を持つ動詞の後ろにくるthat節、つまり「やれよ、やろうよ」の中身を表す節の動詞に使われます。命令文が動詞原形を使うのに感覚が似ています。

②「今実際にはそうではないけれど、これから仮にこうなったら」
If it rain tomorrow,…(もし明日雨なら…)
⇒現在では使われなくなり、代わりに「if+直説法の現在形」(つまり普通の現在形)が使われるようになりました。
If it rains tomorrow,…
⇒これが現代英語の標準的な形。

つまり、学校で習う「時・条件を表す副詞節では未来のことでも現在形を使う」というのは、もともとは仮定法現在(動詞の原形)を使っていました。

今では仮定法が廃れて、普通の(直説法の)現在形を使うようになっています。

そして現代英文法では、この形は仮定法の文とは異なるものとして区別されています。

なぜなら、「もし明日雨なら」と言っているとき、「本当に雨になるかもしれない。その場合は…」というふうに、少なくとも50%は「実現する」と考えて話しているからです。

ここが「実際にはそうじゃないけど」を前提に話す仮定法とは違うところです。

If it rains tomorrow, the game will be canceled.(もし明日雨なら、試合は中止になるだろう)

仮定法過去:動詞の過去形を使う

「今実際そうではないけれど、今、仮にこういう状態なら…」

If I were (was) you, I wouldn’t make the decision.(もし私が君なら、その決断はしないだろう)
⇒主語がI にも関わらず、動詞がwereになっているのは、もともと仮定法において、be動詞の過去形の形がすべてwereだからです。ここが直説法の過去形の活用と違うところです。

しかし、今では仮定法が廃れて、ただの(つまり直説法の)過去形が使われることが多く、特に話し言葉では主語が単数ならwereではなくwasが使われることが多くなっています。

帰結節(ifがついていない方のS+V~)の助動詞にも注目しましょう。

こちらも「実際にそうはならないだろう(will not)」という話をしているのではなく、「あくまでその仮のお話の中で想像すると、そうはならないだろう」という意味で過去のwouldn’tを使っています。

仮定法過去完了:過去完了の形を使う

「あのとき実際にはそうではなかったけど、仮にあのときこういう状態だったなら」

If you had stayed there, you could have seen her.(もし、(あのとき)そこから離れなければ、君は彼女に会えていたのにね)
⇒過去完了を使うことによって、「あのとき実際にはそこに居なかったけど、仮に…」という話をしています。帰結節では「助動詞の過去形+have+過去分詞」を使います。

帰結節とif節

仮定法であるなしに関わらず、ifの文を作るときは、帰結節(ifを使わない方のS+V~)には助動詞を使うのが基本です。

助動詞には、「心の中で思っているだけのことであり、実際に起きている話じゃないよ」ということを表す働きがあります。

例えば、以下のような感じです。

will:するつもりだと心に思っている(意志)、~だろうなと思っている(予想)
can:やろうと思えばできると思っている(能力)、あり得るなと思っている(可能)
may:~してよろしいと思っている(許可)、~かもしれないと思っている(推量)
must:~しなければならないと思っている(義務)、~に違いないと思っている(断定)

if節は、条件節とも呼ばれ、If it were raining now,…(仮にもし今雨が降っていたら、…)というように、ある条件を心の中で設定する作業をします。

ということは、その後には「こうするだろう」という「心の中で思っていること」がくるのがごく自然で、このために、帰結節では助動詞を使うのが一般的になります。

If it were raining now, I would try the new video game.(仮にもし今雨が降っていたら、新しいテレビゲームをやってみるだろうけど)

以上、仮定法の全体像をざっと見渡してみました。

ifとともに使うことが多いのは事実なのですが、仮定法の核心が「動詞の活用の一種である」ということに着目することが重要です。

2. 仮定法過去

仮定法過去は、「今、実際そうではないけれど、彼にそうだったら」ということを表す文法形式です。

「今のことだけど、動詞は過去形を使うんだよ」ということを教わって、最初は混乱したかもしれません。

まずは、「過去形というのは過去を表すのだ」という呪縛を断つことが大切です。

過去形が表す概念

過去形はもちろん「過去」を表すためにあります。

しかし、物理的・時間的な過去だけを表すものでもありません

これを考えるにあたって、人間が時間をどう見ているのか、を考えることが重要になってきます。

以前にお話ししたように、人間は実際には見ることも触ることもできない時間というものを実際に見ることも触ることもできる「場所」の概念を通して理解しています(このような思考方法を、メタファー(隠喩)と言いましたね)。

時間を一本の道のように考え、未来は前にあり、過去は後ろにあり、今いる場所を現在と考えます。

今いる場所は、自分が生きる現実であり、したがって、現在形は「現在」という時の一点よりも、「自分のいる現実の世界」(場所)を表すことの方が自然で、このため現在形は「いつもそうだ」という話をすることが多くなります。

一方で、英語の過去形は「あれはあのときの話で、今は現実ではない」というニュアンスの話をするのが普通です。

つまり「今いる場所とは違う」「現実とは離れている」ことを過去形が表すという用法が生まれてくるわけです。

この感覚のせいで、例えばThat may be true.よりもThat might be true.の方が、現実である可能性が低いことを表しているわけです。

また、この現実離れ感は「婉曲・丁寧」にも応用され、Will you~?やCan you~?でお願いするよりも、Would you~?やCould you~?でお願いする方が丁寧だという文法が成立します。

敬意や丁寧さは「相手と距離をとる」ことで成立するからです。

そして、仮定法過去ですが、「今実際に現実ではないけれど、仮にもしそうだと仮定して話すと…」ということが言いたいわけですから、「現実から離れている」ことを表現するために、過去形を使っているのだと考えることができます。

日本語で例を挙げてみましょう。

例えば、面と向かって聞き手に「甘え、いい奴だったよな…」と言えば、相手は「何で過去形だよ!」とツッコミを入れるでしょう。

お母さんや、恋人の女性に向かって「綺麗だったよね…」なんて言ったら、「今は違うっていうの?」と怒られるでしょう。

このように、過去形は「今は違う・現実には違う」という前提を含めることができるのです。

この感覚が英語の仮定法過去にあるわけです。

ifを使わない仮定法に慣れておこう

仮定法過去は

If S 動詞の過去形~, S 助動詞の過去形+動詞原形~.

という形が基本ですが、もっと柔軟に使えるようにしておきましょう。

エッセイライティングなど、議論においては、上記の形を使うことが多いと思います。

しかし、会話の中では、if節の部分は話し手と聞き手の間ですでに文脈として了解されていることがよくあり、したがって、後半の帰結節だけが使われる場合がよくあります

I wouldn’t accept the offer.((私だったら)その申し出は受けないな)
⇒「If I were (was) you」は言わなくてもわかっているので省略されています。wouldn’tが表すのは話し手である「私」の「予想」。

You couldn’t say such a thing in such a circumstance!(そんな状況で、(あなただったら・人って普通)そんなこと言えないでしょうよ!)
⇒仮にそんな状況になったら…という文脈の中で。ここでのyouは人一般を表すことも、あるいは話し相手を直接指すこともあります。

This is the last thing I would eat.(こいつは絶対食わないな)
⇒the last thing S+Vを直訳すると「SがVする最後のもの」。実現する可能性の高い順に並べたときに最後にくるもの、つまり最も可能性が低いもの。I would eatとなっているのは、「実際には、絶対食わないけど、仮に食うと考えたとしても」という意味の「食べるだろうとしても」ということです。wouldは「非現実の予想」を担当しています。

“How’ it going?” “I couldn’t be better!”(「調子はどう?」「最高だよ!」)
⇒「(実際にこれ以上良くなろうとは思わないけど)彼にこれ以上良くなろうとしても、なることはできないだろうよ」が直訳。

3. 仮定法過去完了と仮定法の慣用表現

仮定法過去完了は「あのとき、実際にこうじゃなかったけど、仮にそうだったら、こうしていたのに」というのが基本の形で、

If S had+過去分詞~, S 助動詞の過去形+have+過去分詞~.

という形をとります。

If you had attended the meeting, they would have taken your plan more seriously.
(もしあなたがその会議に出ていたなら、彼らはあなたのプランをもっと真剣に検討していてくれていただろうに)

if節のところで、過去実際にはそうじゃなかったということを過去完了で表しているわけです。

帰結節のところでは、助動詞の過去形の後ろにhave+過去分詞をつけることで、「あのときこうしていただろうに(でも、実際にはしなかったけど)」という、過去を振り返った「非現実の思い(例文の場合は非現実の予想would)」を表しています。

前項の仮定法過去と同じく、仮定法過去完了も、話し言葉では、後半の帰結節だけを使用するパターンがよくあります。

口癖になるくらいよく使われるのが、「後悔を口にする」、should have+過去分詞のパターンです。

~しとくべきだった!(実際にはやってないけど)」ということですね。

I should have done that!(それ、やっとくべきだったなぁ!)
⇒シュッドハヴではなく、シュダヴと発音されるのが普通。それくらい固定した表現として定着しています。I shouldn’t have done that!で「やるんじゃなかった!」というのもよく使われます。発音はシュドゥンダヴ。

他には「もっとうまくできてたはずなのに!」というのもよく使われます。

I could have done better!(もっとうまくできてたはずなのに!)
⇒クッドハヴではなく、クダヴと発音されるのが普通。慣用表現化しており、doneの後ろの目的語(例えばitとかthat)は発話されないのが普通です。

仮定法の慣用表現

①I wish+仮定法

叶わない夢だとわかっている願望を表す表現です。

I washの後ろに、「if節からifを除いたもの」をくっつけると出来上がりです。

I wish+if you were here now →I wish you were here now.
「夢は叶わないとわかって願う」+「もし仮に今あなたがここにいたら」→「今あなたがここにいたらなぁ、と思うよ」

I wish+if he had not left his wallet at home →I wish he had not left his wallet at home.
⇒「私は叶わないとわかって願う」+「もし(あのとき)彼が財布を家に忘れていなかったら」→「(あのとき)彼が財布を家に忘れていなければなぁ、と思うよ」

wishの他にも、希望したり、期待したりする言葉にhopeexpectがあります。

なぜwishだけが仮定法と相性が良いのかを説明しておきます。

hopeは「実際にそうなることを希望する」ことを意味する動詞です。

I hope you’ll be back soon.(あなたがすぐに復帰してくれるといいなと思っています)
⇒実際にそうあってほしい、だからそうしてね。という気持ち。

仮定法は「実際は違うけど」ということを言うための文法なので、hopeでは使えないことがわかります。

expectは「この状況では、この後当然こうなるだろう」ということを予測するという意味の動詞です。

このため、実はexpectには、「期待する」という和訳は当てはまらないことがよくあります。

We expect some rain tomorrow.(私たちは、明日は雨だと予想しています)
⇒天気予報で、手元にある気象データから、明日は当然雨だろう、と考えています。これを「私たちは、明日は雨だと期待している」と訳してはおかしくなります。

このようにexpectは「当然現実になるはず」という予測を表す動詞ですので、「実際は違うけど」という仮定法とは相性が良くありません。

しかし、wishは「神頼み」に近く、そのため、「実現しないことはわかっている」という感覚が付いて回ります。

よって、仮定法と相性が良いのです。

以下の例文は仮定法の文ではないので「実現しないことはわかっている」という感覚はありませんが、wishの持つ「神頼み」の性質をよく表しています。

I wish you a merry Christmas.(あなたに良いクリスマスを)
⇒wishの第4文型で、「願う+渡す」。「私が神にかけた願いが、あなたに届くように」ということを表します。ここでもwishは「神」に願っています。

②It is time~の構文

「It is time+仮定法過去の文」で「そろそろ~する時間でしょ」ということを表します。

なぜ後ろに仮定法の文がくるのか?

それは「今、そろそろ~する時間なのだけれど、実際にはまだやってないよね」ということを表しているからです。

It’s time you went to bed.(そろそろ寝る時間だよ)
⇒実際には寝てないよね、だから寝なきゃね、という意味合いがあります。

It’s about time I was leaving.(そろそろ失礼いたします)
⇒(実際にそうはなっていないが)本来なら、今、去りつつある途中のはずの時間です、だから本当においとまいたします、ということです。

「had better+動詞原形」は「助言」というよりは「脅し」

「had better+動詞の原形」は「~した方がよい」と訳されるため、「親切な助言」という勘違いを与えることがありますが、実際には「脅し」に近い表現で、特に主語がyouで、相手に対して面と向かってこの表現を使うと、「やらないとまずいことが起きるぞ」という意味合いになります。

You’d better not.(やめといた方がいいぜ)
⇒やったらどうなるかわかってるんだろうな。

主語をyouにするなら、せめてI thinkを前に付けてもっと柔らかい表現にしましょう。

I think you had better avoid meeting him.(彼に会うのはやめておいた方がいいと思いますよ)
⇒会うと、とんでもないことになると思いますよ。

主語がIやweなどの一人称になると、「やばい、どうしよう。~しないとまずい!」という感じのシチュエーションを表すことになります。

We had better take a taxi.(私たちタクシーで行った方がいいですよ)
⇒そうしないと遅刻ですよ、ヤバいですよ。

この表現を仮定法で紹介しているのはなぜかと言うと、ここで使われるhadは一種の仮定法過去で、「こういう状況をhaveした方がbetterですが、でも今実際にはこういう状況をhaveしていないですよね!」という警告の感じが出る表現だからです。

しかし、had betterの後に動詞の原形がくることでわかるとおり、一種の助動詞的表現として定着しています。

4. 仮定法現在から見えてくる英語の歴史

アメリカの英語は最先端か

英語というのは当然、イギリスを発祥地とするわけです。

そしてそこから、北米大陸やオーストラリア大陸をはじめ、様々な場所に広がっていきました。

イギリスから北米への本格的な移民が始まったのは17世紀、今からおよそ400年位前です。

ではここで質問です。

「古い、昔ながらの英語」が今も残っているのはイギリスとアメリカ、どちらでしょうか?

こう尋ねると、英語の講師含めて結構な人数の方々が、「イギリス英語に古い形が残っている」とお答えになります。

ところが実際は逆で、アメリカ英語の中にこそ、「化石」のように古い英語が残っているものなのです。

これは歴史のいたずらでもなんでもなく、必然です。

日本語を例に考えてみましょう。

明治の末以降、日本から大勢の人々がブラジルに移民しました。

その末裔の日系2世、3世の方々の中には日本語を話す方々もいます。

では彼らの話す日本語はいつの時代の日本語でしょうか?

そうです。大正、あるいは昭和初期の日本語である可能性が高いのです。

なぜなら彼らはその世代の日本人からしか日本語を学ぶ機会がないからです。

一方で、本国の日本は、海外の日系社会と比べて圧倒的に人口も多く、その分すごいスピードで新しい言葉が生まれ、入れ替わっていきます。

このように海外に渡った言語は母国の言語より古い形を残しやすいのです。

ですので、アメリカ英語には17世紀以降の古い形が残っていることがよくあります。

イギリス英語とアメリカ英語でいくつか用法の違うものがありますが、もともとの形はどうだったのかと言えば、すべてではないにしても、かなりの確率でアメリカ英語の方が元々の形だったりします。

suggestやdemandの後ろのthat節

suggest(~してはどうかと言ってみる)、demand(有無を言わせず~しろと要求する)、recommend(推奨する)など、「やれよ」「やろうよ」を意味する動詞の後ろにthat S+Vがくるとき、イギリス英語では一般にthat S should動詞原形~という形をとりますが、アメリカ英語ではthat S 動詞原形~という形をとります(ちなみにこのアメリカ英語の形は日本では好んで文法問題に取り上げられます)。

I suggested to him that he should be nicer to Tom.(イギリス英語)
I suggested to him that he be nicer to Tom.(アメリカ英語)
(私は彼に、トムに対してもう少し良くしてやってもいいのではないか、と言った)

The doctor strongly recommended that my daughter should eat more.(イギリス英語)
The doctor strongly recommended that my daughter eat more.(アメリカ英語)
(その医者は、うちの娘にもっと多くの食事を摂るようにと強く勧めた)

日本の高校などでは一般的に、「もともとS should 動詞原形だったのが、アメリカ英語ではshouldが省略されて使われるようになった」と説明されます。

そこには「アメリカ英語よりもイギリス英語の方が古い。だから、イギリス英語の形が元々で、それが変化してアメリカ英語の形になったのだろう」という誤った思い込みがあるように思えます。

実際には逆で、アメリカ英語のthat S 動詞原形~というのが古い元々の形で、後にイギリスで新しくshouldを使う言い回しが生まれたと考えるのが自然です。

仮定法現在とは何か

これまでお話ししたように、仮定法過去というのは「今実際そうではないけれど、仮に今もしそうだとしたら」という「今の仮定の話」をするときに、動詞を過去形にするものです。

仮定法過去完了というのは「あのとき実際そうではなかったけれど、仮にあのときそうなっていたら」という「あのときの仮定の話」をするときに動詞を過去完了にするものです。

では仮定法現在というのは何かというと、「今は実際そうではないけど、この先仮にこうなったら」ということを表すものです。

よく学校で「未来の話でもifの後ろにwillをつけない。動詞を現在形にして」と言われたのを覚えているでしょう。

If it rains tomorrow, I will not go out.(もし明日雨なら、外には行かない)

これはシェークスピアあたりの昔の英語では、現在形ではなく、仮定法現在、つまり、動詞の原形がきていました。

「今は雨じゃないけど、もしこの先雨になったら」ということで、仮定法現在が使われていたのです。

If it rain tomorrow,…

そしてこの仮定法現在が廃れて、ただの直説法現在形になったのが、現代英語です。

仮定法現在は「今はそうじゃないけど、これからこうなれば」という意味だけでなく、「今はそうじゃないけど、これからそうしてね」という命令や依頼の意味でも使われていました。

ですから、suggestやdemand、recommendなどの「やれよ」「やろうよ」の意味を持つ動詞の後に続く「やれよの中身」を表すthat節にはその名残として仮定法現在である動詞の原形が使われるのです。

命令文が動詞原形を使うのと似たような感じだと思っていいかもしれません。

この構文は文法問題でよく取り上げられるだけではなく、現代アメリカ英語で普通に使われています。

この構文で動詞の原形を使うことに苦手意識を持っていた読者の方は、ぜひ、命令文で動詞の原形を使うのと同じ気持ちで使ってみてください。

きっと、もっとしっくりと使えるようになるはずです。

5. as if~の時制をどうするか

時制の一致を受けるとき・受けないとき

「まるで~であるかのように」という、「実際にはそうではないけれど、例えて言えば~のような」ということを表す、「as if+仮定法のS+V~」という表現があります。

He talked about the accident as if he was (were) a victim.(彼はまるで自分が被害者であるかのようにその事故について話した)

例文では、実際には被害者じゃないけれど、まるで被害者のように話をしているので、「現実じゃないよ」という意味で動詞がwas(書き言葉ではwere)になっています。

ここで問題になるのが、「仮定法は時制の一致を受けない」というルールです。

例えば上記の文を見た英語学習者の方から質問を受けることがよくあります。

「talkedという動詞の形でわかるとおり、この文のできごとは過去のできごとなんですよね?じゃあ、過去を振り返っての仮定法だから、as ifの後ろは仮定法過去完了にならないといけないんじゃないですか?」

確かに普通ならそうです。

ここで言う「普通」というのは、「もしあのとき~だったら、~していたのになぁ」ということを表そうとする場合です。

If I had known the truth, I would have been nicer to him.(もし(そのとき)真実を知っていたら、彼にもっと良くしていたのになぁ)

しかし、as ifの場合はそうはいかないようです。

高校の英語の授業や、大学受験予備校で「仮定法には時制の一致がない」というお話を先生から聞いたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。

それが何を表しているのか、少し説明しておきます。

時制の一致:主節の時点からの視点

時制の一致というのは、「自動的に動詞の時制が変化するルール」ではありません。

I think he liked it.(彼はそれを気に入ってくれたのだと思う)

I thought he had liked it.(彼はそれを気に入ってくれていたのだと思った)
⇒「節」は大きな文の中に埋め込まれた小さなS+V~のこと。主節とは、文の主役のS+V~のこと。従属節は小さく埋め込まれた、ここではthink/thoughtの目的語の役割をするS+V~のこと。

上記の文なら、一般的な教わり方としては、「主節の動詞の時制が1つ古くなれば、従属節の動詞もそれに従って1つ時制が古くなる」という感じだと思います。

そこで、多くの英語学習者は「主節の動詞の時制の変化に従って、従属節の動詞も自動的に時制が変わるのだ」という印象を持ちます。

しかし、心の働きとして時制の一致を捉えてみると、もっと自然な感じで捉えることができます。

I think he liked it.なら、彼の過去のあのときの様子を、「彼は満足していた(he liked it)」と、今の自分が判断(I think)していることを表しています。

I thought he had liked it.なら、今の自分が、「あのときの自分はそう判断した(I thought)」と振り返り、その判断した内容は、「自分が判断した、過去のその時点で、彼はすでに満足している状態を持っていたよなぁ(he had liked it)」ということになります。

以上のように考えると、時制の一致は決して機械的なものではないということが感じられるのではないかと思います。

仮定法の時制に一致はない

さて、本題に戻ります。

「仮定法には時制の一致がない」です。

正確には、「直説法の節と、仮定法の節の間には時制の一致がない」と言うべきでしょう。

冒頭の例文をもう一度見てみましょう。

He talked about the accident as if he was (were) a victim.(彼はまるで自分が被害者であるかのように、事故について話した)

2つの節の間には「時間的なつながり」がありません。

なぜなら、片方は現実の世界で、もう片方は現実ではない世界です。

違う世界なので、時間的つながりはないのです。

ですからいわゆる「時制の一致」はありません。

しかしそうは言っても、as ifの後の、仮定法の動詞の時制にルールがないわけではありません。

そしてそのルールは単純です。

直説法の節の動詞が現在形であろうと、過去形であろうと関係なく…

①直説法の節の出来事と、仮定法の節の出来事が同時に起きているなら、仮定法の節、つまりas if節の動詞は仮定法過去。

He looked at me as if he saw a ghost.(彼はまるで幽霊を見るかのような顔で、私を見た)
He always looks at me as if he saw a ghost.(彼はいつも、まるで幽霊を見るかのような顔で、私を見る)
⇒彼が幽霊を見るかのような目つきをするのと、私に目を向けるのは同時に起きていることです。

②仮定法の節の出来事が、直説法の出来事以前に起きているなら、仮定法の節、つまりas if節の動詞は仮定法過去完了。

He ran out of the room as if he had seen a ghost.(彼はまるで幽霊でも見てきたかのような顔で部屋から飛び出してきた)
He always comes out of the house as if he had seen a ghost.(彼はまるで幽霊でも見たかのような顔つきで、いつもその家から出てくる)
⇒「幽霊を見たかのような出来事」が先にあり、その後、「(飛び)出てくる」という出来事が起きます。

このルールが発動するのは、「まるで~のように」という意味を表すas if、as though、likeといった接続詞の後ろの仮定法の節です。

ここでは「時制の一致」というよりは「同時に起きたのか、ずれて起きたのか」ということがポイントになってくるわけです。

6. 「もし万が一」のif+should

If the flight should be canceled, we would have to find a hotel to stay at.(もし万が一飛行機が欠航するようなことがあれば、私たちは泊まるホテルを探さないといけないことになるだろう)

if+shouldで「もし万が一~するようなことがあれば」という意味のフレーズになります。

今回はなぜif+shouldにこんな意味が出るのか、そして、どういうイメージのフレーズなのかを解説していきます。

should=「当然」

shouldはshallの過去形から出来上がった助動詞で、「当然」という根っこの意味を持つ言葉です。

そこから①「当然~するべきだ」「状況から考えて当然~した方がよい」という「助言」の意味と、②「当然~するはずだ」「状況から考えて、この先こういうことが起きるはずだ」という「予測」の意味が生まれます。

①Your coughing is terrible. You should go see a doctor.(咳がひどいね。医者に診てもらった方がいいよ)
⇒咳の状況から考えて、医者に診てもらうのが当然だ。

②He should arrive by eight.(彼は8時には着くはずだ)
⇒状況から考えて、8時に着くと考えるのが当然だ。

ではshallはどういうイメージの言葉なのでしょうか。

shall=「運命」

shallは「決まった運命の流れの上にいる」という意味を根っことする助動詞です。

ただ、未来を表すshallの用法は現在ではほとんど使われず、アメリカ英語ではwillが使われるのが一般的です。

使われたとしても、非常に古風な印象を与えます。

We Shall Overcome(勝利を我らに)(米国公民権運動のシンボルとして歌われた曲のタイトル)
⇒私たちは必ず乗り越える(そういう運命の流れの上にいる、という感じ)。

I shall return.(必ず戻る)(マッカーサー元帥がフィリピンから撤退するときに言ったとされる言葉)
⇒私は必ず戻ってくる(運命はそうなっている、という感じ)。

上記の言い回しは普通の会話では出てこず、芝居がかったセリフっぽい印象を与えます。

とにかく、ここで言いたいことは、shallには、この「運命の流れの上にいる」というイメージがある、ということです。

さて助動詞の過去形は「現実から遠ざかる」という意味で使われることが多いのです。

mayよりもmightの方が、「ひょっとしたら感」が強くなるのがその典型です。

shallとshouldにもその関係があり、shallの「運命的に必ずそうなるだろう」という「現実になるだろう感」が、shouldではshallに比べて現実感が薄れ、「状況から言えば普通はそうなるだろう」という感じになるのです。

そしてそこから「普通はそうするべきだ」と「普通はそうなるはずだ」という意味がshouldに出てきます。

if+shouldに「万が一」という意味が出る理由

なぜここまで、shouldだけでなく、shallの意味まで詳しく述べてきたのでしょうか。

実は、if+shouldの「もし万が一~」という意味は、shouldではなく、shallから出ていると考えられるのです。

どういうことか、説明していきます。

It is raining now.(今雨が降っている)…直説法の現在進行形
⇒100%の現実として、今雨が降っている最中にある。

If it was (were) raining now, you wouldn’t go out, would you?(仮に今雨が降っているとしたら、君は外出しないでしょう?)…仮定法過去の進行形
⇒実際には100%雨は降っていないのだけど、仮に降っているとしたら…

このように、直説法と仮定法では、現実であるのかどうかが正反対になります。

これを直説法のshallと、それを仮定法にしたshouldに当てはめると以下のようになります。

念のためにもう一度申し上げておきますと、このshouldは「~すべき」のshouldではなく、直説法のshallを仮定法として使うためにshallの過去形になったshouldです。

It shall rain tomorrow.(明日はきっと雨が降ることになるはずだ)…直説法
⇒shallは「運命的にそうなる流れになっている」。98%は現実にそうなるであろうという考え。

If it should rain tomorrow, the game would be canceled.(もし万が一明日雨が降るというようなことになれば、試合は中止になるだろう)…仮定法

shallを直説法で使えば「98%は現実にそうなる」という意味になります。

そして、直説法と仮定法では、現実であるかどうかが正反対になるので、この直説法のshallを仮定法のshouldにしてif+should~の形で使うと、「実際には98%現実にならないのだけど、仮にもし残り2%の可能性で現実になったら…」という発想が出てきます。

この「2%の現実になる可能性」が「もし万が一そうなったら」という意味を生むのです。

if+shouldの形は倒置の形でもよく使われます。

If he should call me, tell him I’m for the plan.
→Should he call me, tell him I’m for the plan.
((まあ、ないとは思うが)万が一彼が私に電話をかけてくるようなことがあれば、私はその計画に賛成だと伝えておいてくれ)

「これは仮定の話だ」ということを強調するために、それを表すshouldが文頭に出てきています。

ややこしいのは、この仮定節が文末にくる場合、気を付けないと構文の形が読み取れない英語学習者が結構いるということです。

Tell him I’m for the plan / should he call me.

if節というのは文末に回されるときはカンマを使わないことが普通です。

そういうこともあり、上の例文ではthe planとshouldの間に切れ目があることがわかりにくいわけです。

if+shouldの構文は、帰結節の言い回しにも特徴があります。

上記の例文のように、帰結節に命令文が使われて「万が一こうなったら、こうしておいてくれ」という言い回しになることが多いというのが1つです。

あとは、控えめなお願いとしても使われます。

以下の例文ではifの代わりにin case S+V~(SがVする場合において=もしSがVしたら)を使っています。

In case you should change your mind, here’s my number.(万が一気が変わったら、ここに私の電話番号がありますから)

それから、帰結節にwillを使う場合もあればwouldを使う場合もあります。

使い分けは、話し手がどれくらい現実的な予想をしているかによります。

「まずあり得ない」という気持ちでしゃべれば帰結節にwould、「ひょっとしたらあるかも」という気持ちがあれば、willを使います。

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